男の子を育て直したい〜『これからの男の子たちへ』を読んで
離婚事案も扱う弁護士で、ふたりの男の子の母親でもある太田啓子さんの著書、『これからの男の子たちへ』(太田啓子著・大月書店)を読みました。
以前アルティシアさんの講演会で、この本が、フェミニスト・上野千鶴子さんに抵抗感のある男性や、学校で性教育に悩む教師から生徒へ、家庭で息子に教えるのに役に立つ、と勧められていたのが気になっていました。
最近ようやく、夫からのDVやモラハラに苦しむ妻の話が社会の表に出て来るようになりました。つくづく、幼い頃から、親や、社会から発せられる価値観や行動パターンとして女らしさ男らしさを刷り込まれた事が、女性への加害を生んできたのだと痛感しします。
女性は、被害を受けても「女性を思えばこそ、愛しているからこそしたのだ。男はそういうものだ」などと言われて、黙らせられてきました。
だから、『これからの男の子たちへ』のなかの、「子育てにおいて、意識すべき事が、男の子と、女の子は違うということは当然、と思うようになった」の一文に共感できました。
本文では、著者が自ら子育ての場面で、「感情を言語化する」トレーニングをした方法が紹介されています。
例えば、「泣くだけでは相手に伝わりません何が悲しいのか言葉にして言ってごらん」「少し落ち着いて考えてごらん」などと言うとしています。泣いている幼い我が子に、あれこれ想像して、提供してしまっていた自分を思い出しました。
また、小島慶子さんとの対談に出てくる、息子にガールフレンドがでできて、夫が「クラスで一番可愛い子、流石だなあ!」と褒めたときに、これは有害な男らしさを刷り込まれてしまう、だから逃すまいと、すかさず息子に、「パパの言うことは間違っている!」と怒りまくった……というエピソードは、面白いと思いました。
他にも、桃山商事の清田隆之さんとの「男子ってどうしてああなんでしょうか」、小学校教員の星野俊樹さんとの「多様性が尊重される教室を作るには」などの男性との対談も興味深く読みました。
読み進むにつれ、路上のナンパが女性の8割以上に迷惑と思われていることに男性が無自覚など(SNSより)、男性たちが加害に自覚なく生きてきたことを知り、驚かされました。また、それを助長してきたのは、社会、母親たち、私達なのだと認めざるを得ず、愕然とします。一方で、男性がこれを自ら読み、気づき、学習、実践をしない限り、母親、妻の役目が増えてしまうのか、と思うと、またもやもやしてしまいます。
『これからの男の子たちへ』は子どもに関わるすべての方に読んで欲しい、中身の濃い本ですが、共働き家庭が当たり前になりつつある今だから、読まれるようになったのかもしれないと感じました。
あとがきには、雑誌「VERY」2019年1月号(光文社)掲載の「きちんと家のことをやるなら働いてもいいよ、と将来息子がバートナーに言わないために、今からできること」という記事や、雑誌「LEE」(集英社)の記事について書いてあり、今の女性が羨ましいとさえ感じました。
「男性のつらさを減らすためにも、性差別をなくすためにも、男の子の育て方がキーになる」。とすると、やはり母親は責任重大なのだと。まだ、父親は気づいていないから、「これからの父親」育てのためにも、頑張らなければならない。
最後に、「旧来の男らしさに囚われず、マジョリティとして性差別について物申すーそういう男性の、『あの人みたいになりたい』と、後進世代に思わせるようなロールモデルが、日本社会にはまた乏しいと思います」との一文を読み、女性発信だけではなく、男性発信が増えて欲しいと期待します。
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