老いはなぜ忌避される?


土曜日の朝の読書会では、『アンチ・アンチエイジングの思想――ボーヴォワール『老い』を読む』(上野千鶴子/みすず書房)を読んでいます。
 ボーヴォワールは「老い」の持つネガティブなイメージを取り揃え、「老い」や「老女」といった言葉は、長い伝統によって悪い意味を負わされてきたと言います。その、ネガティブなイメージを持ち続ける「老い」に、人はいつか、誰でも、到達し、遭遇します。老いには抗えない。遠い先の誰かのこととして自分自身が語ってきた他人事だった「老い」に、自分がなる瞬間が来たとき、人は愕然ととするのです。「老い」が自分の身にもやってくることは当たり前なのに、狼狽えてしまう。 ボーヴォワールは「老いるとは、他者になる経験だ」とも言ったそうです。 

 著者の上野千鶴子さんは、友人らに「初めて老いを意識した出来事」を聞き回り、シルバーシートで席を譲られる経験が、それだという人が多かったと書いています。若者に、「どうぞ」と譲られる時に「自分は老いて見られている」と気づいて、そのことを嫌悪してしまう。譲ってくれた相手に向かって怒ってしまう人が多いのは、老いを受け入れられないから。よく見る光景です。きっと「老い」の持つネガティブなイメージに私たちが囚われ過ぎていることを意味しているのでしょう。

 人は生きていれば必ず老いて自立ができなくなります。そんな存在になっても尊厳を持って生きられる社会がないとしたら、それは、社会の構造的な問題であるはず。ああ、何かと似ていませんか?そう、女性を忌避する、女性が生きづらい社会が構造的な問題であることと同じ仕組み? 近代化以降、生産性、効率重視で役に立つ人間ばかりを称賛する社会は、老いや衰えを否定してきました。今は誰もが「アンチエイジング」を唱えます。でも、上野さんはこう言います。

 人間、役に立たなきゃ、生きてちゃ、いかんか

 人は人の手を借りて生まれ、人の手を借りて死んでゆく。そういうものだ。そのどこが悪いのか。

65歳以上高齢者、2024年は3625万人・総人口の29.3%で、過去最高の更新続く」―総務省が昨年末に出した数字です。社会全体の老齢化が激しい日本で、老いを受け入れる方法を世界に先駆けて考えなければ・・ボーヴォワールが『老い』を書いた年齢に近づき、そう思います。  

NPO法人YouToo

生きづらさを抱える女性たちの思いに「You Too」と寄り添う場です。 もやもやする気持ちを言葉にし、生きづらさの背景を考え、学び、生きやすい社会を作るために連帯して声をあげていきます。「わたし」を主語にして話すことで、あなたも、社会も、元気になる方法を探せるはず。 NPO法人YouTooには、あなたと同じ思いを持ったわたしたちがいます。

0コメント

  • 1000 / 1000