私たちは韓国ドラマから強く生きる方法を学ぶ

土曜の朝のフェミ読みで、9月はエトセトラの『私たちは韓国ドラマで強くなれる』を読んできました。ただ、韓国ドラマを見ていない参加者も多かったので、どんなドラマがあるのか、ここで紹介してみようと思います。

まずは、最近の韓国ドラマにおけるジェンダー描写について、全体像から。 

 これまで韓国のドラマは、伝統的な性別役割のとおり、男性は仕事中心、女性は家庭中心という伝統的な役割分担が描かれ、男性キャラクターは権威的で保護者的な立場として描かれてきました。
それが、近年は、キャリア志向で自立した女性キャラクターが増加し、仕事と家庭の両立に悩む現代女性の姿が描かれるなど、女性像が変化してきたのです。
ロマンスの描写も変わってきました。男性主導ではなく、女性が積極的に恋愛をリードするケースも増えてきて、年上女性と年下男性のカップル(ノンナ)がテーマとなることもあります。また、感情表現豊かな男性キャラクターが登場し、家事や育児に積極的な男性像も描かれるなど、男性像も多様化してきました。
なお、限定的ではありますが、LGBTQ+ 表現も徐々に可視化が進み、同性愛をテーマにしたドラマも制作されるようになっています。
描かれるテーマには、セクハラやガラスの天井など、職場での性差別を扱う職場でのジェンダー問題、若い世代と年配世代のジェンダー観の違いが描かれる世代間で価値観が違う問題などが多くあります。そこに現れるジェンダーのもやもやに共感が得られるから私たちは韓国ドラマに夢中になれるのでしょう。

今の日本のドラマと韓国ドラマにおけるジェンダーの取り上げ方の違いをいくつかあげてみます。
女性の職業描写では、韓国ドラマにはキャリア志向の女性主人公が多く、高い地位や専門職(医師、弁護士、経営者など)で活躍する姿がよく描かれます。一方、日本では、職場を舞台にしたものでは、女性の役職は比較的低く、事務職やOL(古い!)の描写が依然として多く、それを容認している社会を反映していると思われます。

恋愛の描き方も違います。韓国ドラマでは、ロマンスが物語の中心となることが多く、男女の駆け引きや感情の変化が詳細に描かれますが、日本では恋愛は副次的なプロットとして扱われ、メインのテーマは仕事や友情などが中心にあることが多いようです。
韓国ドラマでは、感情表現が豊かで、ロマンチック、さらに体格もよい男性像が好まれるようで、「ツンデレ」的な性格の変化も多く描かれます。日本の男性像は、感情表現が控えめで、特に仕事関連のドラマでは厳格でストイックな男性が多いようです。
また、韓国では家族の絆や世代間の対立がより強調され、家族の関係が描かれることも多くあり、ジェンダー役割も家族関係の中で描かれることが多くなっています。日本では、個人の自立や友人関係に焦点が当たることが多く、家族関係は軽めに扱かう傾向が見えます。

韓国ドラマは社会問題を正面から取り上げ、ジェンダー不平等、職場でのセクハラ、DV などを扱うことが増えていますが、日本では、ジェンダーを社会問題として直接的に扱うものは比較的少なく、暗示的に、もしくは個人の問題として矮小化して描かれることが多いです。
LGBTQ+ 表現に関しては、韓国:主流のドラマでの表現は限定的ではあっても徐々に増加する傾向にあります。日本では、深夜帯や特定のチャンネルでの放送に限って制作、放映されているようです。
韓国ドラマでは年上女性と年下男性のカップリング(ノンナ)が頻出し、性描写については保守的な傾向が強く、直接的な性的描写は少ないのに対して、日本のストーリーは、男性が年上のパターンが多く、性描写が頻出します。特に深夜ドラマなどでは(過去には昼のドラマでも)女性の欲望や性的描写がより直接的に表現されることがあります。
韓国ドラマが持つ魅力は、文化的背景や社会的な価値観の違いを反映したものと言えますが、特に韓国ドラマは従来のステレオタイプから脱却しようとする動きが強いように見えます。

では、韓国ドラマのジェンダー表象について語るなら、どんなドラマを見るのがおすすめでしょうか。異なる角度からジェンダー問題や社会の変化を描く、興味深い韓国ドラマをいくつかあげてみます。

●「梨泰院クラス」(2020)
強い女性キャラクターと多様な性的指向を持つキャラクターが登場
社会的偏見や階級差別といったテーマも扱う

●「SKYキャッスル」(2018-2019)
韓国の教育熱と階級社会における女性の役割を描く
野心的な母親像と、そのプレッシャーに苦しむ娘たちの姿を描写

●「恋のスケッチ~応答せよ1988~」(2015-2016)
1980年代を舞台に、当時の伝統的な家族観やジェンダー役割を描く
時代とともに変化する価値観も表現

●「ミス・コリア」(2013-2014)
美の基準や女性の社会進出をテーマにした作品
美人コンテストを通じて、韓国社会における女性の立場を考察

●「キム秘書はいったい、なぜ?」(2018)
職場でのジェンダー関係や、女性の自己実現をコミカルに描く
従来のロマンスドラマの型を少し崩した作品

●「浪漫ドクター キム・サブ」シリーズ (2016-)
医療ドラマで、女性医師の活躍や職場での性差別問題を扱う

●「青春の記録」(2020)
芸能界を舞台に、男女の成功に対する社会の異なる評価基準を描く

●「椿の花咲く頃」(2019)
一人の女性を中心に、3世代の女性たちの人生と選択を描く
時代によって変化する女性の立場や価値観を表現

●「ビッグマウス」(2022)
法律事務所を舞台に、有能な女性弁護士の活躍を描く
犯罪スリラーの要素もあり、ジェンダーバイアスや権力構造も扱う

●「二十五、二十一」(2022)
1990年代後半を舞台に、若い女性の成長と挑戦を描く
スポーツを通じて、女性の自己実現や社会の偏見と向き合う姿を表現

韓国ドラマにおけるジェンダー表象の変遷や多様性について、より深い洞察を得ることができるでしょう。

さらに映画も!

ドラマと比較すると、映画ではより大胆なテーマ設定や表現方法が採用されていることが多いです。こちらもぜひ、参考にしてみてください。

2020年以降のジェンダー表象に注目すべき韓国映画リスト

●「ミナリ」(2020)
監督:リー・アイザック・チャン
アメリカに移住した韓国人家族の物語
伝統的な家族観と新しい環境での役割の変化を描く

●「世界で一番普通の恋愛」(2021)
監督:チョン・ガヨン
聴覚障害者のカップルの恋愛を描く
障害とジェンダーの交差性を探る

●「三進火災」(2022)
監督:チョン・ジウ
職場でのセクハラや権力構造を描いたサスペンス
Me Too運動の影響を受けた作品

●「決算報告書」(2022)
監督:パク・チャヌク
中年女性探偵が主人公のミステリー
女性の視点から社会の闇を描く

●「コンクリート・ユートピア」(2023)
監督:ウム・テファ
災害後の社会でのジェンダー役割の変化を描く
極限状況下での男女の力関係を探る

●「ヘルボーイ」(2023)
監督:チャン・ヨンワン
女子高生ボクサーの成長を描く
スポーツ界における女性の挑戦を描く

●「XOXO」(2023)
監督:ジョ・ユンソル
デジタル時代の若者の恋愛と性を描く
現代の男女関係とオンラインデートの実態を探る

●「キル・ボサム」(2022)
監督:チョ・ピョンソン
女性殺人請負人が主人公のアクション
男性中心のジャンルに女性主人公を据えた作品

これらの映画は、現代韓国社会におけるジェンダー問題や女性の立場について、様々な角度から描いています。伝統的な家族観の変化、職場での性差別、デジタル時代の人間関係など、幅広いテーマを扱っています。  

読書会だけでなく、ドラマや映画を見る会も開催できるといいなと思います。

NPO法人YouToo

生きづらさを抱える女性たちの思いに「You Too」と寄り添う場です。 もやもやする気持ちを言葉にし、生きづらさの背景を考え、学び、生きやすい社会を作るために連帯して声をあげていきます。「わたし」を主語にして話すことで、あなたも、社会も、元気になる方法を探せるはず。 NPO法人YouTooには、あなたと同じ思いを持ったわたしたちがいます。